中国山地幻視行~大峰山・熱暑で撤退、ああ…

中国山地幻視行~大峰山・熱暑で撤退、ああ…


6月19日、大峰山
 登山道に入るには、別荘地の舗装道路を抜けなければならない。午前9時半というのに日は高く、路面から熱気が立ち上る。影を伝って歩く。
 杉林に入り「2合目」の標識を過ぎて人心地ついた。日は遮られたが風はない。急登にとりつくと体内で蓄熱作用が起きているのがわかる。「これはまずい」とつぶやいた。
 1時間ほど我慢したが、たまらず足を止めた。幸い新緑は鮮やかだ。微かに葉の擦れる音。森の静寂の中で、しばらくその音を聞いた。「今日は、これ以上は無理だな」。そんな思いが頭をかすめた。
 駐車場に戻ると、どこかの団体による注意書きがワイパーに挟んであった。「熱射病に注意」とあった【注】。
 雪の深さのため引き返したことはあっても、暑さで撤退したことはなかった。これも季節外れの暑さのせいか。

【注】この日、気温計を持っていなかったが翌日付の新聞で広島市内は32.6度とあった。気象台の気温計は比較的涼しいところにあり、市街地は通常2度は高い。山中とはいえ、この日の登山路も32度かそれ以上だったかもしれない。


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微かに葉の擦れる音

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2合目の標識

中国山地幻視行~恐羅漢山・新緑を楽しむ

中国山地幻視行~恐羅漢山・新緑を楽しむ


 526日、恐羅漢山に登った。スキー場ゲレンデ横の急斜面に息を切らし、広葉樹林に入った。石段に腰を下ろし、見上げれば一面の新緑である。
 たどりついた山頂には誰もいなかった。昼飯の支度にとりかかる。隣の旧羅漢山【注1】から一人の男性が現れた。カメラバッグを肩から掛けている。「オオヤマレンゲは咲いていますか」と声をかけた。今のシーズン、本格的なカメラ持参で旧羅漢へ向かうのはオオヤマレンゲが目当てだろう、と踏んだのだ【注2】。
 「いや、まだ全然」と、男性は顔の前で手を振った。「先日、道後山へイワカガミを見に行ったらもう終わっていました。今年は全般に開花が早い」というと「いや、木の花は逆で遅れています」と男性。「早い」「遅い」の花談義をしばらくした後、男性はさっさと下りて行った。
 ぽつんと取り残され、周囲を見渡せば相変わらず新緑が輝いていた。この景色をもう少し楽しもうか、と帰途は夏焼峠を回った。

【注1】この山は双耳峰で、かつては現山頂でないほう(旧羅漢山)が高いとされた。その後、正確な測量で、現山頂の標高が高いとされている。
【注2】2018年6月10日当ブログ参照。中国山地幻視行~オオヤマレンゲは咲いていた・恐羅漢山: 風と歩く


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恐羅漢山の頂上。大きな標識が立つ

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山頂から臥龍山を望む

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右手の木立のすぐ左に深入山

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夏焼峠。右手に折れ、牛小屋高原に下る

中国山地幻視行~道後山・イワカガミは遅かった

中国山地幻視行~道後山・イワカガミは遅かった


 久々の中国幻視行。512日、広島県北の道後山に向かった。目当てはイワカガミである。昨年は514日、その前は523日、さらにその前は521日。ちょうどよいころ、と思い山道にとりついた。
 まず岩樋山(1271㍍)の頂。風が強い。足元を探す。いつもならあるはずのピンクの花がない。名前の由来である特徴的な葉は、あちこちに見受けられる。いやな予感がする。
 道後山(1269㍍)への縦走路に移る。いつもなら、鞍部にこれでもか、と小さな花が咲き乱れるのだが、やはり葉しかない。どうしたこと?と思いつつ道後山の登りに近いあたり、やっと一輪。周囲には「トウがたった」状態のイワカガミが数輪。来るのが遅かったのだ。というより、例年に比べ開花時期が前倒しだったのだ。これも近年の異常気象のせいか。
 そういえば、今年は桜の開花も早かったな…と後悔するが、先に立たずである。


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岩樋山頂の手前。出発地点の駐車場を見下ろす

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隣の猫山。スキー場のゲレンデがくっきり

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岩樋山頂。いつもなら見えるはずの大山はガスの中

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岩樋から道後まで1.4㌔

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ようやく見つけた貴重な一輪

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道後山への最後の登り

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道後山頂