中国山地幻視行~大峰山・熱暑で撤退、ああ…
6月19日、大峰山
登山道に入るには、別荘地の舗装道路を抜けなければならない。午前9時半というのに日は高く、路面から熱気が立ち上る。影を伝って歩く。
杉林に入り「2合目」の標識を過ぎて人心地ついた。日は遮られたが風はない。急登にとりつくと体内で蓄熱作用が起きているのがわかる。「これはまずい」とつぶやいた。
1時間ほど我慢したが、たまらず足を止めた。幸い新緑は鮮やかだ。微かに葉の擦れる音。森の静寂の中で、しばらくその音を聞いた。「今日は、これ以上は無理だな」。そんな思いが頭をかすめた。
駐車場に戻ると、どこかの団体による注意書きがワイパーに挟んであった。「熱射病に注意」とあった【注】。
雪の深さのため引き返したことはあっても、暑さで撤退したことはなかった。これも季節外れの暑さのせいか。
【注】この日、気温計を持っていなかったが翌日付の新聞で広島市内は32.6度とあった。気象台の気温計は比較的涼しいところにあり、市街地は通常2度は高い。山中とはいえ、この日の登山路も32度かそれ以上だったかもしれない。